メガネを拭くたびに
初めて会ったというのに、その人は僕のことをとてもよく分かっていた。
ような気がした――というのが、この場合、正確な表現だろうなあ。直接、言葉を交わすどころか、彼の声を聞いたのだってそれが初めての機会だったんだし。
先週の土曜日、以前から親交のあった女性コピーライターAちゃんの結婚記念パーティーに出席したのだけれど、そこで新婦に紹介されたのが他ならぬ彼。つまり、新郎のMさんでした。ライブ・パフォーマンスがあって、懐かしい友人の顔ぶれがあって、本当に楽しい時間だったのだけど、ちょうど二人の座っていた場所とは反対の位置に座っていたお陰で、新郎新婦へのお祝いの挨拶は、パーティーがお開きになるまで果たせずじまい。会場出口への廊下には友人たちが長い列をなしていて、その列の一番先では、純白のウェディングドレスとシルキーな銀色のタキシードに身を包んだ二人が、友人たち一人一人に声を掛け、手土産を渡しています。二人のこれまでの人生を振り返ることが出来るようにと、廊下に飾られてあった写真の数々が、列が進むのを待つ時間を退屈から救ってくれました。あれはいい演出だったなあ。そして、ようやく新郎新婦にご対面となった訳です。
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